2023.9.22. 論文がChem. Eur. J.に掲載されました
D3で取り組んでいた研究についての論文がChemistry A European JournalのArticleに掲載されました!
2021年のJACSでGPxの触媒サイクルについてモデル研究を行い、主役であるセレノシステインセレネン酸の直接観測と、その環化を報告していました。
今回は、その環化したもの (=セレノシステイン由来環状セレネニルアミド) にフォーカスしたぞ、という論文です。
意外にもセレン上の求電子性が高く、塩基がなくてもジケトンやチオールと反応することを明らかにしました。これは求電子性が高いとされるセレノシステインヨウ化セレネニル (Sec–SeI) と比較しても顕著でした。
この知見は、セレノシステイン由来環状セレネニルアミドが、これまで考えられていたようなGPxの保護体としての役割 (2021 JACS, 2022 BCSJ参照) だけでなく、そのものが高い求電子性を有する中間体としてセレノプロテインで重要な役割を担っているのではないか?ということを示すものです。
またセレノシステイン由来のものとしては初めて、X線結晶構造解析に成功しました。
結晶中ではなんと溶媒のジエチルエーテルがセレンに配位しており、セレン上の求電子性の高さを物語っています。
個人的には、今までの「提唱されてきた触媒サイクルをなぞる」研究ではなく、化学種の反応性を有機化学者の観点から明らかにして「生化学への提案」をできた点で大きな一歩だと考えています。
かなり地味な論文ではありますが、今後生化学における理解の一助になれば幸いです。
CEJは初めて投稿しましたが (というか1stとしてWileyは初めて投稿)、なんとか査読は絶賛して頂きました。実験系のreviseもなく、無事通ってくれてホッとしました。
2nd authorの唐﨑さんには先達としてのデータだけでなく、先輩として応援をして頂き大変お世話になりました。セレノシステイン三人組はまだ論文が出せそうなので、その際にはまた...
1st authorとしての後藤研の論文はあと1つくらいになりました。頑張るぞ!
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