2026.5.3 菊波君 (M2卒) の論文がChem. Lett.に掲載されました
菊波君 (2026 M2卒) の論文がChem. Lett.に掲載されました!彼がB4の時に合成していたセレノアミドに関する論文です。早速紹介していきましょう。
Kyo Kikunami, Hiroyuki Kusama*, Ryosuke Masuda*
"Synthesis of a selenoformamide bearing both a hydroxy group and a bulky aryl substituent"
研究の概要
基本的な有機化合物であるアミドの酸素原子をセレン原子へと置き換えたセレノアミドは、反応性の高いC=Se結合を有しながらも窒素原子による共鳴安定化から、空気安定で扱いやすい誘導体も数多く知られる。一方、変換可能な置換基を有するセレノアミドの例は未だ限られており、特にOH基を有するセレノアミドの合成は少ない (論文本文を読んでみてください)。
今回我々は、標的としてきた分子 (これも論文を読んでみて!) の前駆体として、OH基を有しながらも窒素上に嵩高い置換基を導入したセレノアミドの構築を行なった。この分子自体は空気下でも扱うことができた。変換可能なOH基およびセレノホルムアミド部位を有するため、今後応用が期待される。
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〜嵩高いセレノホルムアミドの簡便合成〜
2026年は2報目も菊波君です。論文にした経緯などは最後のひとこと欄からご覧ください。実は前回のOMよりも色々苦労しました。笑 菊波君、年度末の忙しいところ本当にご苦労様。現在は新天地で博士課程として活躍を開始した菊波君の協力を得てインタビューしました。
学生さんへのインタビュー
著者の紹介
菊波 喬 (KIKUNAMI, Kyo)
学習院大学 草間研究室 M2卒
(2026年5月現在 九州大学博士後期課程)
- 実際に研究を進めていくうえで、嬉しかったことや感動の瞬間は?
セレノアミドの結晶構造は論文の中で1番のお気に入りです。初めて自分で世の中に報告されていない分子を合成し、それをしっかりと視覚的に構造が示されたのは、嬉しかったです。
- なぜ研究がうまくいったか、その秘訣を教えてください。
標的セレノアミドの合成を行う前に、既報セレノアミドの再現実験を行ったところ、文献収率通りの結果が得られ、自分の実験操作に自信をもつきっかけとなりました。
研究室に配属されてすぐだったため、丁寧に操作することを心がけていました (常に丁寧にやってくれてもええんやで)。例えば、LiHMDSを滴下する際は、シリンジでかなり時間をかけて手動で行った印象が強く残っています。
シリンジポンプもあるけど、結局手動が一番系中の様子もわかるしいいよね。
- 実際に研究を進めていくうえで、苦労した点
この研究に関しては、B4の研究室配属された当初にやっていたテーマでありました。セレノアミドの合成途中では、オートカラムを行った際に目的物が流されて得られなかったという苦い思いもしました。
UV吸収ありきのオートカラムですからね。モノの極大吸収波長は大事。これもよい経験となったことでしょう。
MOM基の脱保護に関しては、思ったより強い条件でないと脱保護できないことは意外でした。また、ヒドロキシ基を有するセレノアミドの変換は全然上手くいかず、思うような結果が出なかったことは苦労したと思います。
- 本研究を通して成長した点など
これまでの経験をいかし、これからも頑張ります。
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増田からのコメント
菊波君の紹介は前回のOM記事を見てください。やはり今回も本筋テーマではなく、失敗作から得られた知見をまとめたものとなります。化合物データがほぼ全て揃っていたため (えらい!)、卒業直前の3月に、菊波君の未来のためを考えても、勿体ないし出版しておくか、という話になりました。今回は論文の書き方についてもレクチャーすべく、草稿は全て菊波君に一任し限られた時間で書いてもらいました。そこから僕が修正するわけですが...いかんせん、論文の流れが組みづらい。前回のOMではストーリーがうまく固まったのですが、ちょっと苦戦してしまいました。それでも自分の中で、博士進学する学生さんには2報以上ずつ持たせてあげたいという強い思いがあるので、年会前日のに投稿まで行き着くことができました。
目的の研究を遂行するうえでの前駆体としてはなかなか有望だったのですが、セレノアミドの反応性が高く、この分子を活かした研究を断念するに至ったのは残念です。論文には可能な限り知見を詰め込みました。大層な分子の合成の論文を書けるのが一番ですし、僕のテーマもそうなっておりますが (?)、骨格構築の観点から有用な反応 (今回用いたAFAのような試薬の使い道とか) を共有しておくことも、また大切な一歩だと思っています。
査読は結構厳しい意見を頂き、過去一長いResponse Letterを書きました (JACSの時は両面ペラペラ1枚ずつ)。ひとつひとつ丁寧に、可能な限り本文にも取り込んで回答を作ったわけですが、結構骨が折れました。これまでの論文で、いかに分子や周囲に恵まれていたかがよく分かる経験でした。結果的にAcceptされたのでよしとしましょう。彼との研究の本筋は、今現在RM自身によって進んでいます。今年度中には論文としてお目見えできるよう、精進を続けたいと思います。
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