2026.8.7 矢野さん (M2) のHRインタビュー
執筆が遅くなりましたが、先日矢野さん (M2) とセレノカルバモイル化合物についてのHighlight Reviewを出版しました。恒例のインタビュー付きです!
“Selenocarbamoyl compounds with main-group substituents"
Ryosuke Masuda*, Tamaki Yano, Hiroyuki Kusama
Chem. Lett. 2026, 55, upag110.
Reviewの概要
アミドユニットを有するカルバモイル化合物は、有機化学における最も基本的なグループである。一方でそのセレン同族体であるセレノカルバモイル化合物は、特異な結合長と反応性を有するC=Se結合を有しながらも合成例は少ない。特に、窒素以外の典型元素が置換した化合物は極端に限られており、多様な電子状態を有する化合物を探索可能な余地が残されているといってよい。今回のReviewでは、筆者らの最近のセレノカルバモイル化合物の紹介を中心に、セレノアミドの用途から切り込み、セレノカルバモイル化合物全体の反応性に焦点をあてHighlight Reviewとして編集した。
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〜俊星 矢野 珠己 第三作〜
もはやこのHPの存在意義を支えている (?) 矢野さんの3報目になります。今回は直々にお誘いがあり、折角なので最近の仕事をまとめる機会を頂きました。今回も学術面のみならず芸術面でも大活躍です。B4から毎年学生著者1人の論文を出版し続けるのは本当にすごい!
学生さんへのインタビュー
著者の紹介
矢野 珠己 (YANO, Tamaki)
学習院大学 草間研究室 M2 (2026年8月現在)
- レビューを執筆してみて
正直いうと、普段は原著論文しか読まないことが多く、最初はReviewという存在をあまり知りませんでした。学会で自分の仕事を知ってもらって、2報と少しの内容ですがHRを書いてみないか?というお誘いがあったのは大変嬉しかったです。執筆にあたり諸先生のHRを拝見したのですが、「この先生がこんな仕事をされていたのか」という発見が多く、まだまだ勉強の余地に溢れている点を実感しました。
執筆にあたりセレノアミドの論文を蒐集したのですが、自分の知らなかった論文、読み返すと理解の浅かった論文も多く、良い勉強の機会になりました。特に、セレノアミドの合成法をまとめたBookletの中に知らない手法があり、これは自分の研究に活かせるかも?という発見も多かったです。文献を集めるにつれ、村井利昭先生のセレノアミド化学の広さと貢献の深さを実感しました。
- Reviewの作図について
とにかく見やすく正確に、レビューとしての役割を強く意識して描きました。細かいですが、Chem DrawのACS仕様だとカチオンとかアニオンの電荷がアンバランスなので、サイズ小さくしたり...明度と彩度をしっかり合わせた色合いに統一して、雑味をなくしたり。Communicationsではないので、余白をうまく使って、Schemeの幅に合わせて全てを統一したり...かなり気を配っていつも製作をしています。
見やすいポスターや論文、スライドはこういう機微から成立していたのですね。RMも大変勉強になりました。
あとは、今までスライドなどはbold中心だったので、ACS準拠の細字ではまた余白等の感覚が異なりました。元素を強調するときは背景の丸いハイライトを微調整したり、とにかく論文全体を見たときに悪目立ちしないよう気を配りました。私の分子はヘテロ元素が多すぎるので(笑)、色をつけるけど、強調したいところ、そうでないところの使い分けなどが重要でした。
- 出版や校正で苦労した点
本文の特にイントロは先生が担当したのですが、書き出しのギリシアの月の女神セレーネの話がロマンチックでお気に入りです。Se, Te化学を扱う者として、セレンとテルルの由来をしっかり知れたのはよかったです。
一方Reviewということもあり、Referencesの量が多く見直しが大変でした。校正された後の誤謬が多く全部見つける時間が本当に骨が折れました (それでも集中して、一つ一つ抽出してくれました)。論文の見直し自体は3回目なので、ゲラチェックも慣れてきました。実験部分は全て私自身が担当しているので、あれ?この値おかしくない?という感覚があるおかげで、スムーズに訂正できたのはちょっと嬉しかったです。
地味に大変だったのが、(セレノカルバモイル)ホスフィンにN-BnとN-Phの両方が存在していて、間違えないよう丁寧に校閲することです。神経衰弱に近いものがありました。
- TOCについて
今回は先生とTOCの作画も担当しました。矢印の色、結晶の背景、色合いを頑張って考えた結果、当時4月だったのもあり桜の模様にしました。とても気に入っていますし、このことはTOCを見るたびに思い出すのではないかと思います。
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増田からのコメント
矢野さんはすでにChem. Commun. 2025とInorg. Chem. 2025を学生1人で出版しており、その実力と熱量は折り紙つきです。既に次の原著論文に相当する研究は進行していますが (典型元素化学討論会をお楽しみに)、自身の研究を俯瞰してもらう目的もあり、HRの共同執筆をお願いしました。年度終わりから年度始まりの大変な時期によく勉強しよく貢献してくれて、本当に心強い相棒でした。論文出版に慣れた学生さんの存在は、研究を推進するうえでこの上なく貴重です。今後ももっと上を目指しながら、その才能をより開花させて欲しいと願っています。
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論文出版を終えて
矢野さんだけでなく、周辺の皆様にもご満足頂けたようで何よりのHRでした。意外と論文が多く結構時間を要しました。どうやって冗長ではないまとめ方にするか?科学者としても一歩勉強になったと思います。正月に筆が進まないときはどうしようかと悩みましたが、えいやと書き始め脱稿できてひと安心です。まだしばらく論文出版が続くはずなので、ぜひ矢野さんにも次の大輪の花を咲かせて欲しいですね。今回も感謝。
2026.8. RM
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